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中国から帰ってきた人のブログ。

中国から帰国した後の生活をつづるブログ。読書、映画、音楽、日々のできごと等々記録していきます。
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香川県は瀬戸内海に浮かぶ、豊島に行ってきた。


 


ことの経緯はこうだ。


8月末に大学時代の友人から連絡があった。


「実は3月から香川に住んでるんだ~」


半年も連絡をくれなかったとは水臭い話だ、と話をすると、訳あって休職中だという。


しかも香川が好きで転勤してきたが、多忙な仕事のせいで香川が嫌になりそう…という話を聞いて、ここはがぜん一肌脱ぐことに。


「香川のいいところを教えてあげるよ!!!」


 


で、選んだのが豊島。


瀬戸内の景色がきれいで、人がいなくてのんびりできて、高速使わなくてもいける場所。


5月に一度訪れていて、非常に気に入っていたのもある。


 


 


■おっとりした島の空気


豊島は高松港からは高速艇で約1時間。


現代アートで名高い「直島」の隣に位置している。


イメージとしては、アートの意識高い系バリバリが直島。


安藤忠雄や草間彌生を筆頭に有名な建築家、美術家の作品群が並び、世界中から観光客が訪れる。


その傍で、目立たずに素朴さを残しながら、豊島美術館という隠れた名美術館を持っているのが豊島。


どこからか聞いた話、豊島は直島よりリピート率が高いそう。


私も友人を案内するので6回ほど直島に行ったが、あくまで「行っとくべき観光地」としてだ。再度、一人でも何度でも訪れたいと思うのは豊島だなあ。


 


豊島は大きくない島だ。


自転車で一日もあれば一周できるであろう広さ。


島を取り巻く道を走ると、瀬戸内海の景色が次々と姿を変える。


ビルがかすんで見える高松から、瀬戸大橋の見える坂出方面、小豆島はすぐ隣に見えるし、岡山の街は高松よりも近くに見える。


電動自転車で丘を上がると目に入る海の景色も、人気のポイントのよう。


 


行く先々に集落はあるが、コンビニはない。


島らしい洒落たカフェやレストランはあるものの、買い物ができるのは小さな商店のみのようだ。どんどん商品が入れ替わるあくせくとした雰囲気がないのもまた、豊島のいいところ。


 


カフェやレストランは、島の持つ雰囲気を最大限に活かしている。


「海のレストラン」はテラス席に腰掛けると、波が目の前まで迫ってくるようだ。


取れたてのお刺身をおすすめしてくれたが、これが絶品。


芸術作品でもある「島キッチン」の建物は、アジア風でまるで外国に来てしまったよう。


島でとれた食材が丁寧に調理され、風通しの良い縁側で島の風と太陽を感じながらくつろぐことができる。


どちらも行って外れなし。


 


■豊島の歴史


私が行ったのは92週目の平日。


連休もイベントもない平日でも、観光客と見られる若者たちがよく目に入った。


5年前から定期的に催される瀬戸内国際芸術祭の時から、美術館や作品が島のあちこちに展示されている。


小学校の時に習った豊島は「産廃の島」だった。


どこかの業者がごみを大量に捨てて問題になった島。どうしても暗いイメージが付きまとう。


そんなイメージは過去のものになったように、アートを目指して外から人がやってきていた。


島の歴史を教えてくれたのが「川東のおじさん」。


今回、豊島ではこの「川東製麺所」の2階で一晩お世話になった。


着いて早々、川東のおじさんは「じゃあ産廃の話でもするかね」と言って話始めた。


元々豊島の荒くれものだった人が始めた事業が失敗し、目を付けた自動車産廃の回収業。


島民が何度も高松に開業反対に行ったが、取り合ってくれなかったこと。


数年後、兵庫県警から摘発されて世間に知れ渡ったこと。


マスコミと島民の厳しい追及から遂に「あれは公害だ」と見て見ぬふりをしていた香川県が認めたこと。


助けを求めて来てくれた、関西の弁護士。島民と弁護士一丸となって損害賠償請求に挑んだこと。勝訴後に国が処理を請け負ったが、あと2年で期限が来るため急ピッチで作業が進められていること。


おじさんの話は教科書と違って、体験した話だった。


公害と認めないせいで事態を悪化させた県には憤っていたが、責任を認めて謝罪をしてくれた県知事さんの話では涙をうるませていた。


荒くれものだって、若いころには船で高松に飲みに連れて行ってくれた兄貴分だった。


文章を読むのとでは、生きた話を聞くのとでは随分理解の度合いに違いがあると思った。


 


産廃が無くなった後には何を作るべきか話も出ているそうだ。


太陽光発電や、穏やかな最後の時を過ごすことができる老人ホームを作ろうという案もあるそうで、そうなると雇用が生まれて島もにぎやかになるかもしれない、という。


問題が生んだのは悲しみや苦しみだけではなくて、こういう未来が生まれる前段階の為だったのかもしれないなあ。


 


■出会い


 


川東さんのおじさんに礼を言った後夕食を済ませ、部屋に戻った。


部屋はそうめん工場の2階に3室。それぞれ2段ベッドが2組ずつの4人部屋。


わたしと友人に1部屋、あと1部屋に女の子2人組と男の子が1人入るらしい。


知らない人と部屋を共にするのが心配だったが、杞憂に終わりほっとした。


1階にはご丁寧に談話室が用意され、キッチンやお風呂もそこにある。


散歩を済ませた後、談話室を覗こうとしたが、おじさんの講釈が始まっており入るスキがなかった。


おじさんの話が終わるのを待ちながら、島で唯一であろうお菓子屋さんで買ったスナック菓子を取り出した。店主に乗せられ、買いに買ったり8袋…。それを贅沢に3口ほど食べては味見、味見、味見…。そんなことをしていたらおじさんも寝る時間になったようだ。食べかけのお菓子を持って話に混じりに行くと同宿の3人が談話室にいた。


同じ店で買ったオリオンビールを取り出して勧め、ほろ酔いで話に混ざる。


聞くと、みな大学生。島に魅せられたり建築学科の学生が安藤忠雄を学びに来ていたりと面白い。久しぶりに気兼ねなく、ざっくばらんに同世代の人と話をした。大学時代ならまだあったけれど、仕事を始めるとなかなか無い機会。人と話すのって楽しかったと友人に言うと「あんた、接客業…」と指摘されるけれど、それとこれとはまた別物。売上げもなければプレッシャーもない、それでもってフランクに人と話ができるのって面白いなあ…。あれ、私人と話すの好きだったのかもしれないと柄にもなく思ったりしてしまった。恐らく都会から遠く離れた島の、しかも豊島の持つのんびりとした雰囲気だったから、あれほど肩の力を抜いて話せたんだろう。


その日のお昼にもそういうことがあった。


豊島美術館ですれ違った外国人のマダムと、次に行ったカフェで隣の席になった。


目が合うと相手がにこり、こちらも「こんにちは」とつい挨拶。(普段なら絶対やらない)


そんな知らない人とでもコミュニケーションの垣根が少し低くなる空気。


名前も知らない子たちと過ごした一晩は、本当に楽しかった。


 


■瀬戸内国際芸術祭


 


次の日は火曜日で、施設は全て閉まっていた。


直島に行くという3人をまるで島民のように見送ってから談話室でぼんやりと地図を眺めていると、川東さんの奥さんがやってきて、コースを考えてくれる。


そうこうしていると朝早くから出掛けていたおじさんが帰ってきてドライフルーツをくれた。


来年の瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)に向けてお土産物を島民で集まり試行錯誤しているそうな。生の果物より日持ちして、新しい収益になるかもしれない、と。


東京から移住してきたクリエイターも住んでおり、この民泊の宣伝やその他広告に一役買ってくれるそう。島にはビジネスチャンスが溢れている。


 


その一方で、5年前から放置されて最早残骸と化している芸術作品も中にはある。


あれらは今後手入れをされるのだろうか。


沢山の美術作品を維持するのも、瀬戸芸を続ける上では大事なミッションだと思った…。


 


まあそんな訳でぶらぶらして2日目は終わった訳だが、豊島楽しかった。


人と人の距離が近いからかな、また行こうと友人と話をしている。


 


私は大人になって改めて地元の良さを知ったが、それを県外の友人に紹介して気に入ってもらえたのはかなり嬉しかった。


このブログを読んでちょっとでも興味を持ってもらえれば幸いです。


 


ちなみに、豊島美術館は、絶対に下調べをしないで行くのがポイントです。


あれほど現代アートを「理解不能」に位置付けていた友人がその位置を見直すわと口走ったほどの。(ちなみに私も見直した。現代アート、すごいものはすごい)


ぜひ、機会があれば…。


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

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