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中国から帰ってきた人のブログ。

中国から帰国した後の生活をつづるブログ。読書、映画、音楽、日々のできごと等々記録していきます。
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教授が授業で勧めていた本を、先週図書館で借りてきた。

日本文学史の授業である。
1970年代の女性作家を紹介するにあたって教授は高橋たか子という名を出し、彼女の作品が”悪意の文学”と言われ
ている、と、代表作の内容を語り始めた。
 

京都を舞台に、友人二人の自殺に同行した、女学生の内面を綴った『誘惑者』。
いつも哲学的な話に花を咲かせる女子三人組のうち一人が、主人公へ自殺の願望を伝える。主人公は友人の自殺に同行することを承知し、友人が三原山の火口に飛び込むまでを見届けた後、一人山を降りる。一人目の自殺の後、三人組のもう一人もまた自殺を望み、それに同行する主人公。しかし二度目の自殺を見届けて下山する際、登山道沿いの茶屋の主人が異変に気づく。「あの娘は以前も二人で登って行き、一人で下山してきた。今回も同じ様だ。さすがにおかしい・・・」主人の通報によって彼女は捕まえられ、事件は発覚する。小説の内容だけでも衝撃的なのだが、これが昭和初期に実際に会った事件をモデルにしているというから更に背筋が寒くなる。
 

もう一編もまた、女性が主人公である。『ロンリー・ウーマン』。小学校校が放火された。その近所に住まう主人公の女性は、小学校の中で逃げ惑う子どもたちのことを想像して愉快でたまらない。彼女は子供が大嫌いなのだ。その事件に陶酔するうちに、彼女は「放火をしたのは自分自身ではないのか?」という妄想に苛まれるようになる。そしてふとしたおしゃべりから、隣人の老婆でさえもが自分が犯人であると知っているという強い思い込みに侵されていく――。
 

強烈な悪意と、それを抱えた女性の生き様に興味を覚え、怖いもの見たさ半分読み始めてみたのだった。
 

小説の内容は期待を裏切らないものだった。
と同時に、先生の語った作品内容に少々の誤りがあることに気がついた。
 

『誘惑者』の導入は、下山する主人公を目撃した「大学生」の語りから始まる。「茶屋の主人」がこの物語に口を挟んでくることはない。
 

『ロンリー・ウーマン』になると、実は5人の女性を主人公にした5編の小説群なのだ。燃えたのは深夜の体育館で子供はいないし、小学校の放火を妄想する主人公は、子供ではなく放火に執着しているように見えた。小学校の放火から始まって、子供が理解できない意地の悪い存在として描かれており、各主人公毎に子供をいまいましいものとして表している部分は説明と変わりないのだが。
 



設定の些細は違っていたものの、教授の語っていた本筋に変わりはなかったし、教授の説明を頭に本編を読み、なあんだ、思っていたものと違うじゃないかとがっかりすることもなかった。
教授の語り口には吸い寄せられるようなものがあって、それは小説の魅力を伝えられる「上手い説明」だったのだと思う。
 

「上手い説明」とは何か。
今回の教授の話に限って言えば、物事の本質をつかんだ説明が簡潔にできているかどうか、だろう。
ここで、周囲の話し上手な知人の顔を思い浮かべてみる。
彼ら彼女らの語りに、つい聞き入ってしまうのは、導入でその話の概略が、突拍子もない言い方で付け加えられるからではないだろうか。
 

「最近中国のニュースを見ていて、すごく面白いのがあったんだけど、それが・・・」ではなく、
「中国でスイカが爆発したらしいよ」だったりする。
 

上記では省略しているが、教授の語りだって、
「友人が火口に飛び込むまで見送った、自殺に同行する女の子の話」であったり
「ものすごく子供が嫌いな女の人がいて・・・」だったり。

 

とにかく、話上手な人はまとめ上手ではないかと思うのだが、どうだろうか。
 

 

最近、日経新聞がうちに届く。
自主的に取っているのではない。内定先企業が半年間の入社前研修にと、10月から代金肩代わりで購読させてくれているのである。なんともありがたい御計らいだ。
内定式での「日経新聞の読み方講座(なんと記者さん直々にご教授して頂いた)」の甲斐あってか、毎日主要記事に目を通す程度の習慣は付いた。
しかし、内容が頭に残っているかと問われれば何ともいかんし難い状態で――目は確かに文字を追っているのだが、その記事の内容や時事単語がしっかり説明できるかというと非常に心もとないのだ。


今日久しぶりに中国語サロンへ顔を出したのだが、サロン終了後に、最高齢85歳と60歳前後のおじさま方に喫茶店へお誘いいただき中国経済についてご教授を受けた。
先輩方のお話に頷きコーヒーを飲むのであるが、困った事に「そうですね」「確かに」「なるほど」以外の言葉が出てこない。
日経で蓄えた中国経済への知識はどこに行ったのだろうか。
その上天然ガスについて「え、知らないの?」と驚かれわざわざ説明までして頂いた。85歳の先輩に。


これではいけない、とお茶会解散後に数日溜めていた日経を抱え図書館へ乗り込むものの、やはりまた、文字を追うだけになってしまう。
だらだらと読み進める途中で、何かふと、ひらめきのように思った。

「人に説明すると思って読んでみるのはどうか?」


人に説明するとなれば、まず自分が納得しなければならない。
自分がなんで?と思うような内容で、人にうまく話を伝えることはできないからだ。
(ちなみに私はこれで何度も失敗してきている)


以下、頭に入ってきやすい新聞記事の読み方。
 

まず、記事の「主語」に○をつける。
次に、記事の最初(特に一面記事や大きな記事では導入部の数行に簡潔に書かれている)で、「主語」が何をしたのかをつかむ。
そして、
・「主語」の行動はどういった影響をもたらすのか?
・なぜ「主語」はその行動に至ったのか?
の二点を考え、それらしい部分に下線を引きながら記事を読み進める。

 

ただ字を眺めるよりも、下線を引くという動作を加えることで、文章がより脳へ入っていく気がする。
一番大事なのは、「なぜ?」「どうして?」と疑問に思い、因果関係を組み立てながら読むことだ。それによって自分を納得させることができると思う。
 

そういえば、池上彰氏が著作の中で、
「何かを調べるときには、「学ぼう」「知ろう」という姿勢にとどまらずに、まったく知らない人に説明するにはどうしたらよいかということまで意識すると、理解が格段に深まります。」(池上彰,2007年,『伝える力』,PHPビジネス新書,p.22より)
と言っている。

そして

理解が深まると、人にわかりやすく、正確に話すことができるようになります。(同上)
 

とも。


少々説明が間違っていても、人を引き付ける解説で私を読書の道へ誘ってくれる日本文学史の教授は、読書の際に作品を理解しようと頭の中が目まぐるしく動いているに違いない。
そう考えると、文字を目で追うだけでなく常に「なぜか」と疑問を持ち続けることは、より深い読書への一歩でもあるだろう。
その意識をひっさげ、読書に新聞購読に、精を出していこうと思うのである。


入社前にある「日経常識テスト」とやらで少々常識が間違うような失態は避けるよう、努力したいが。

 

 

 

 

 

 

 

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無題
内定先からの日経購読いいですね。
きっと読んでない人もいる中、
どうしたら頭に入るか工夫して読んでいて、
きっとこれから活きてくると思います。

記事後半とても勉強になります。

誘惑者、面白そうな本ですね。
読者の秋ですな。
aoyagi 2012/11/09(Fri)19:36:42 編集
コメントありがとうございます
>>aoyagiさん

下宿にテレビがないので、日経読むようになってから世間の話題が分かるようになって楽しいです。
むしろテレビ見るより偏った意見が入ってこないからいいのかもですねー。

誘惑者、お勧めです。
なかなか衝撃的な内容ですが、いろいろ考えさせられて面白かったです。

【2012/11/14 02:42】
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